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ID.245 プラネットマン ID チップ名 属性 攻撃力 レア度 容量 コード 245 プラネットマン ウッド 70 5 32 P 効果 備考 穴の上に出現 穴の上を攻撃が通過 障害物が攻撃の邪魔になる場合 ○ × 星が出現しない コード 入手法 P プラネットマンV2、プラネットマンV3
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非常階段を駆け降りていた聖は、同じくこちらに走ってくる同僚の緋葬架に気づいて手を振って合図をした。 「よお、首尾は?」 「誰に聞いてますの? 完璧です。そちらこそどうですの?」 「案外口が堅くて手こずったが、ほら」 聖は片手に持ったアタッシュケースを掲げて見せた。 「薬に手を加えてた証拠と、あとは俺らの抹殺依頼の証拠。これがあればピースメーカーが出てきても正当防衛の言いわけが立つってわけだ」 「法なんてあってないような世界のくせに、けむたいユグドラシルを筆頭に妙なところだけルールが御座いますからね。企業間抗争とはいえ、こちらに非がないことはきちんと証明しなくては」 「煙たいとかいうな。あれでも世界の秩序の一角何だぞ? 下手なこというと消されるぞ」 「ともあれ、御苦労ですわ。そろそろ時間ですもの。撤退です」 聖の役目はすべてが終わった後に、対外的にこの抗争の正当性を証明できるだけの証拠を集めておくこと。緋葬架の役目は聖がその仕事をしている間と、所長がアンジュのトップと話をしている間邪魔が入らないようにすること。その役目はもう済んだ。爆破は九割方完了し、すでに生存者より死人のほうが多いだろう。万一のために都市周囲には武闘派の仲間が待機しており、万一脱出に成功した市民がいても取りこぼしがないようになっているはずだ。 退路はジョフが確保している。通信は揺蘭李が乗っ取っている。今のところ、予定に大きなずれはない。あとは所長を回収し、撤退。同時にこの都市は完全に崩壊する。 「都市破壊なんて初めてでしたが、案外簡単なものですわね」 「俺はもう二度としたくねえよ。まったく、澪漂やホーンテッドリンクの連中を尊敬するぜ。年中こんなことやってたら、俺なら神経が持たねえ」 「気弱ですこと」 弱音を吐く聖に、緋葬架はからかうような声を投げかけた。 「トランキライザーのトップランカーを目指すものなら、都市の一個や二個くらい破壊したことがなくては」 「どんだけハードル高いんだよ。あと、理由なく都市破壊とかしたら減点対象だからな」 こんな時代でも一応、殺人も器物損壊も犯罪である。度が過ぎればあちこちから制裁が下るし、成績評価も社会的評価も下がる。場合によっては退学処分も十分あり得る。 「でも、エイリアス持ちの戦闘系の先輩方はやってそうですわよ?」 「お前の想定している先輩方のレベルは、すでに世界に通用するレベルであって世間一般の『先輩』の枠には収まらないと思うんだが」 軽口をたたきながらも二人は飛ぶように階段を駆け下りていく。そして地上階まできたところで、予定外の事に気づいた。 「誰かいるな」 「まだ生存者がいたなんて……なんてしぶとい」 ロビーに人の気配を感じる。聖と緋葬架は顔を見合わせた。そして一気に飛び出す。すぐに攻撃がくると思ったが、そうではなかった。案山子のようにロビーに突っ立っていた人影はゆっくりと振り向く。相手が振り向き切る前に、緋葬架は立て続けに発砲した。鍛え抜かれた目と腕は、狙い違わずその人影に吸い込まれ――――直前で動きを止めたと思った次の瞬間、緋葬架に向かって跳ね返ってきた。 「――――!!」 だが緋葬架も並みの人間ではない。半分機械化された視力と手を加えられた反射神経で間一髪、銃弾をかわす。だが、大きく体制を崩すことは避けられない。 「能力者!!」 引きつった叫び声を上げながら、聖も武器を抜く。本来はミスティッククラスという異能者のクラスだが、戦闘訓練はきっちりと受けている。緋葬架の攻撃が防がれたと感じた瞬間、聖は天井に向けて立て続けに銃弾を撃ち込んだ。会社の顔であるロビーを彩る、繊細な作りの証明が次々と割れて、硝子の破片が雨のように降り注ぐ。それは大雑把ではあるが広範囲へのいっせい攻撃となり、同時に視界と相手からの攻撃を防ぐ盾になるはずだった。だが、またも物理法則は裏切られる。降り注ぐガラス片は、相手を傷つけるその前に時間が巻き戻ったかのように逆方向に向かって飛んでいった。いくつかは天井に突き刺さる。 「物体操作かっ!?」 舌打ちして聖は走りだした。人影のほうではなく、裏口へ。緋葬架もそれに続く。小回りが利くようなタイプの能力者と狭いくせに隠れるものは少ないようなロビーで戦うのは、自分で自分を追い込むようなものだ。それに、この状況下なら無理に倒す必要もない。たとえ優れた異能者だとしても、ドームシティの崩壊に巻き込まれれば助かる確率は低いからだ。無理に倒そうとはせず、適当に足止めして回避するのが一番無難と聖は判断した。 「しっかし、なんだあの能力は。ただの物体操作じゃねえな」 サイキックなら弾き飛ばされた銃弾やガラス片はもっと柔軟な動きをしてもよかったはずだ。しかし、それらは愚直に元きた位置へと還っていった。そこから逆算すると、相手がサイキックである確率よりも、ミスティックである確率が高くなる。 「飛んできたものを弾き返す……周辺に見えない盾を作り出す能力か、部分的に時間を逆にする能力か――引力や重力操作でも似たことができるな。あるいは起こった特定事象を無効化する能力とか」 ぶつぶつと聖は可能性を口にするが結論は出ない。そもそもミスティックという異能は、現代の魔術だ。それ故、人工的に未覚醒の人体の力を引き出しているサイキックと違い、明確な型というものが存在しない。似た能力を持つ者同士なら沢山あるが、まったく同一の能力を持つミスティックはまずいないだろう。あえて区別するなら、能力の方向性や発動条件で操作系だの具現化系だの運命干渉系だのと、起こる現象の方向性でなんとなく区別することになる。それでもカテゴリに入りきらない『その他』枠が大量発生するし、複数のカテゴリにまたがる能力も多い。つまり、結論から言うと一撃でミスティックの能力を見抜くのは百戦錬磨の戦士でもかなり難しいのだ。 「あまり自在に操れている風には見えませんわね。単純な操作系ではないと思いますわ」 後から走りだしたくせにすでに聖を追い越している緋葬架が答える。 「私の敬愛するおねえさまは操作系らしいが、おねえさまは本当に滑らかに、それこそ生きているように物体を操りますもの。あの人は弾き飛ばしているだけです」 「おねえさまねぇ」 同じ学園に在籍する性格の悪い知人を思い出して、聖は緋葬架に分からないように顔をしかめた。しかし、性格はともかくとして能力に関しては緋葬架のいう通りである。彼女が操る物体はまるで意志があるかのような動きをする。それに比べれば跳ね返ってきた銃弾は直線的な動きだった。もし彼女があの銃弾を操っていたなら、避けたところで銃弾がさらにリターンしてくるくらいのことはしただろう。 「っていうと、障壁とか時間操作とか」 「時間操作や事象干渉なんて高度で稀有な能力持ちなら、もっとスマートに戦ってきそうですけどね。私は、自動迎撃か何かの能力だと思いますわ。常時発動型の」 後ろからはどたばたと音がする。振り向くと、一直線にこちらに向かってくる人影が見えた。 「何て力ずくな動き」「でも速いですわね」 ほとんど蹴り破るようにして二人は裏口から転がり出た。同時に、聖はこっそり拾っておいたガラス片を地面に振りまく。 「【オストラキスモス(陶片追放)】発動」 聖の能力はガラスや陶器の破片で囲った空間を、周囲の人間から察知されない隔離空間に変えるというものだ。その中にいる聖やその仲間も知覚外に置かれる。 裏口から飛び出してきた追手は二人の姿が見えないのに気づいて足を止めた。実際はすぐ近くにいるのだが、聖の能力のため見えていないのだ。 「げっ」 初めて明かりのあるところで追手の姿を見て、聖は下品な声を出した。緋葬架も目を瞬かせる。 「あらあら、女性でしたのね。って、聖。この方を御存じですの?」 聖の反応に、緋葬架は小首をかしげてみせる。苦い顔で、聖は口を開いた。 「御存じというか、一方的に顔を知ってるというか……うちの学校の五年生だぞ」 この場合、五年生とはトランキライザー本科五年目の生徒を指す。 「先輩ですの? なぜこんなところに?」 「フリーの用心棒だから、まあいてもおかしくない。ミスティッククラス単独履修で、階級はマスタークラスだったか? 相河アイラ。日米ハーフで、エイリアスは【アキレス(死なない化け物)】だったか? 250から260位あたりのはずだ。あの辺はわりと変動激しいから正確に今何位からは分からない」 「あいが、あいら……詳しいですわね」 「まあな。成績上位者の顔と名前はできるだけ把握しておくことにしている」 戦闘能力がずば抜けて高いわけではない聖にとって、強者との距離や関係性を調節することは生き残る上で欠かせないことだ。当然、情報には敏感になる。 「…………聞いたことがありますわね。能力はよく分かっていませんけど、どんな戦場でも絶対に怪我をしない奇跡の人とか。しぶとさでは定評がございますわ」 緋葬架は肩をすくめて見せた。 「まあ、なんとなくタネは分かりましたわ。あの方、自分に対して向かってくるものを反射させる能力の持ちぬしなのですわね」 「多分な。強力ではないし稀有でもないが、厄介な能力だ」 怪我をしないということは、なんらかの方法で攻撃を防ぐ能力を持っているということだ。相手に向かっていった攻撃が見事に直線的に跳ね返ってきた経過を考えると、相手の能力は自分の近くに来たものを弾き返すという能力の可能性が高いということになる。しかも弾き返すだけで自分の攻撃を放ってきたりはしないところから、外部からの干渉によってはじめて発動する能力と考えられる。 「厄介だな。あの手の迎撃系能力は攻撃には不利だが、防御に強い奴が多い。放っておいたら生き残ってしまう」 なんと言っても向かってくるものをすべて弾き返す能力なのだ。瓦礫で押しつぶそうとしても、その瓦礫を弾き返してくるだろう。ちらりと視線をやると、アイラは慎重に周囲を探っていた。 ミスティックは、同じミスティック同士の戦闘に慣れていることが多い。不可解なことがあればすぐにミスティックと結びつけ警戒する。やりにくい。 「不意打ち……は無駄でしょうか」 「発動条件は知らねえが、今まで不死身と呼ばれるほど損傷が少ない人間ってことを考えると無駄だと思うぜ。負けはしないだろうが、勝つ手段が思いつかない。所長たちと合流するのは?」 「無理ですわ」 ちらりと時計に目をやって、緋葬架は首を横に振った。 「すぐにでも片をつけないと私たちも崩壊に巻き込まれます。所長がどこにいるのか正確に分からないのに、合流するのは難しいでしょうね。それに待ち合わせ場所まで逃げれば、最悪、脱出手段を破壊されてしまいます」 「タイムリミットもあるのかよ……神様、俺が何をしたっていうんだ」 「しているでしょう、色々と」 「このタイミングで制裁に乗り出すことねえじゃねえかよ!!」 絶叫してもこの隔離された領域にいるかぎり、彼の声は外へ届かない。一通り不平不満を叫んだあと、ため息とともに聖は武器を握りなおした。 「仕方ない。やるぞ」 「彼女の能力を考えると飛び道具は厳禁ですわね。でも接近戦のつばぜり合いなら弾かれないかもしれませんわ。聖、白兵戦は?」 「授業で単位は取れてるぜ。本職に適うかは謎だけどな」 「十分です」 緋葬架は両手に持った二丁の自動拳銃を軽く振った。どういう仕組みになっているのか、その拳銃の銃口のすぐわきから仕込み刃が現れる。聖は銃火器が使えない状態での戦闘用に常備している軍用ナイフを引き抜く。ナイフと言っても刃渡りは三十センチ近くある。本来は殺人専用ではなく、様々な作業によって刃の部分を使い分ける作業ナイフだ。だが、人が殺せないわけではない。 「……俺、これが終わったらマジで休暇取る」 「なぜ自ら死亡フラグを立てるんですの? 馬鹿ですの? 死ぬんですの?」 「今は洒落にならねえだろ、それ」 力なく聖は呟いた。そしてゆっくりと息を吐く。次の瞬間、その表情が入れ替わる。気だるげな少年から、仕事の顔に。 「俺が正面からまっすぐ。お前が後ろからゆっくりでいいか?」 「ええ。私も同じことを考えていましたの」 澄ました顔で緋葬架は答えた。同僚が囮役を買って出たというのに顔色一つ変えない。苦笑をすると、ためらうことなく聖は飛び出した。何もない空間(に相手には見える)から飛び出してきた聖に、アイラは驚いた顔をした。しかし、すぐに迎撃体制に入る。鋭い音がして刃物と刃物がぶつかり合った。 思ったよりも重い感触に、聖は内心舌打ちする。能力の厄介さを抜きにしてもアイラは強い。ナイフを受けるときの力の流し方でそれが分かる。しかし、聖もプロだ。それで怯むレベルではない。受け流されたように見せかけて、死角から刃をつきあげるように動かす。普通の相手なら切り傷くらいはつけられる速さだ。だが、刃がアイラの肌を切り裂くよりも前に聖の手からすさまじい力でナイフがもぎ取られる。 「――――っ!?」 突き出したナイフは、その勢いと同じくらいの勢いで逆方向にはじけ飛んだ。同時に聖の身体も走ってきた方向へ吹き飛ばされる。目の前には相手の刃。咄嗟に聖は腕を上げて急所をかばおうとした。 「このっ!!」 その前に逆方向から緋葬架が襲いかかる。だが、刃が届くよりも前に同じように振り下ろした仕込み銃はあらぬ方向に吹き飛んだ。咄嗟に後ろに跳んで緋葬架自身は吹き飛ばされるのを免れる。一方の聖は受け身は取ったものの無様に地面に叩きつけられた。 「緋葬架!」 「分かっていますわ! この方は自分に対して向かってくるものを元の方向に同じだけの力で弾き返す能力者!!」 最悪だった。あちらはこちらを攻撃できるのに、こちらの攻撃はすべて弾かれる。そんな相手をどうやって倒せばいいのか。平素ならば答えは簡単だ。倒しにいくことをやめて回避することに専念すればいい。しかし今回は勝手が違う。確実に殲滅しなければならない。たとえそれがあきらかに雇われの用心棒でも。 「はっ、用心棒というのはいつからそこまで義理堅くなったんですの? さっさと逃げれば、貴女なら逃げ切れたでしょうに」 わざと過去形にして挑発的に緋葬架は言った。アイラはかすかに顔をしかめる。こうしてみると悪くない顔立ちをしている。少なくとも厄介な能力者には見えない。 「逃げる必要はない。依頼主は死んだようだが、こちらにも矜持はある。敵の首の一つ持って帰れなければ、立場がない」 「なるほど」 フリーというのは働いた報酬のすべてが自分に入ってくる代わりに、フォローが一切ない。一度でも無様な姿をさらしてしまえば評価はおどろくほどに下がる。それを食い止めることは職業生命がかかってくる。向こうも命がけなのだ。 「ですが、こちらも退くわけにはいきませんわ」 緋葬架は残っている方の銃剣を持ち直した。先ほどの攻撃で吹き飛ばされたのは、彼女に向かって振り下ろした武器と彼女に向かっていった聖だけだ。手に持っていただけの武器や、彼女から逃れるように跳んだ緋葬架はなんともなかった。それが相手の能力の制限を示している。つまり、こちらから向かっていかなければあの能力は発動されないのだ。 「まあ、それが分かったからってなんともなりませんけど」 ぽつりと緋葬架は呟いた。そう、なんともならない。緋葬架の能力では、向かっていかずに敵を倒すことはできないのだから。異能者や特定の特殊技術を持つ人間なら彼女を倒す方法があるが、緋葬架にそれは使えない。使えない手段は意味がない。 「さあ、かかっていらっしゃいなさいな」 緋葬架の言葉に相手も身構える。だが、予想通り突っ込んでくるようなことはない。互いに間合いを計りつつ、円を描くように動く。 緋葬架が相手の気を引いている間に大勢を立てなおした聖は、やや後方に下がって様子をうかがっている。 足元で砕けた硝子が音を立てた。それが合図になったかのように、両者は同時に飛び出す。音を立てて刃物がぶつかり合った。緋葬架よりもアイラのほうが半歩ほど前に出ていたため、銃剣は弾かれることなくアイラのナイフを受け止める。同時に逆方向から聖が切りかかる。聖のアイラに向けられた刃は届くことなく弾かれるが、それに気を取られてアイラの体勢が変わる。それを見越して緋葬架は予備のナイフを、彼女の動きの軌道上に差し出した。 血が飛び散った。予想通り、彼女のほうから向かった場合攻撃は弾かれない。ナイフの切っ先がアイラの頬と右手を浅く切り裂く。舌打ちしてアイラは後ろに跳ぶと、首に巻いていたスカーフをほどいて視界を塞ぎそうになった血を拭った。水色の布が赤く染まる。服としては使えなくなったそれを、アイラは投げ捨てた。 「このっ!!」 「死なない化け物でも傷はつくようですわね」 せせら笑いながらも、緋葬架の首を冷や汗が伝う。本当は今の一撃で片がつく予定だった。しかし、思った以上に相手の反射速度が速い。致命傷を与えることができなかった。同じ手は二度と通用しない。冷静な顔の裏で、緋葬架の思考は目まぐるしく変化する。時間はもう残っていない。最悪、一度退いて戦場を変えてから決着をつけた方がいいかもしれない。そこまで考えた時、アイラが動いた。先ほどまでのナイフ術ではない。銃だ。 「聖! お退きなさい!」 叫んで緋葬架自身も物陰に跳び込む。アイラの能力と遠距離攻撃手段は相性がいい。アイラが攻撃を受ける可能性があるのは、先ほどのように軌道上に敵の武器が存在した場合とほとんどあり得ないがアイラが攻撃を弾き損ねた場合くらいだ。そして前者は、周囲に敵を寄せ付けなければ起こり得ない。 髪を銃弾がかすった。ただでさえ足場が悪い上に、あちこちで爆破と倒壊が起きているため地面が揺れる。それは向こうも同じだが、腕だけを動かせばいいのと全身で逃げ回らなくてはならないこちらとではまったく違う。 「退こう、時間がない!」 「貴方が先に逃げてくださいな。私より足が遅いのですから」 聖は言葉に詰まった。標準からすると聖の足は速い方だ。学園の戦闘系生徒からみてもけして遅くはない。しかし、サイボークでありかつもともと非常に優れた身体能力を持つ緋葬架と比べると確かに遅い。 「なおのことだ。お前には一度命を救われてる。二度も三度も救わせるわけにいくか」 「どちらも死んではそれこそ無意味でしょうが!」 爆風がここにまで噴きつけてくる。足元の瓦礫が崩れ、足場がなくなる。 「――――っ」 体勢が崩れる。緋葬架は自分に向く銃口を自覚しながら、体をひねって急所を隠しつつ、腕で頭をかばう。しかし、この状況では頭を守っても足が動かなくなれば死は確実なこともどこかで自覚している。 銃声が響いた。その直前に、緋葬架の身体を誰かが突き飛ばす。華奢な体は思ったより飛んで瓦礫の上に着地した。代わりにぱっと緋色が飛び散る。 「くそっ!」 腕に二か所被弾して聖は悪態をついた。痛みに耐える訓練をしていようと、怪我をすれば痛いものは痛い。 「生存率考えるなら、お前だけが逃げたほうが確実だろう、この場合! 俺は情報操作や謀ならともかく、戦闘能力だけならお前の方が上だ! 先に行って所長と合流しろ」 「こ、このくそ馬鹿っ! 下っ端のくせに!!」 「たまには上級生で年上の言うことを聞け!」 「私はおねえさまの言うことしか聞きませんわ!」 「それは駄目だろう!? せめて所長の言うことくらい聞けよ!」 「…………仲がよろしくて羨ましいこと」 鬱陶しげにアイラは髪をかきあげた。つまらない言い争いをしていた二人は、ほぼ同時に口を閉ざす。 「なら、一緒に死ねばいいんじゃないの?」 銃弾を当てるすべはなくとも、こちらに飛んでくるものを弾くことならできる。聖は軌道を見極めようと、手に持ったナイフを握りしめた。緋葬架も身構えているが、下手に動いて聖が標的にされることを恐れて大きく動くことはできない。 音を立てて近くの建物の硝子がはじけ飛んだ。時間が迫っている。このままではたとえ銃弾に当たることがなくとも建物の倒壊に巻き込まれて圧死する。それに気づいているのか、アイラは爆破の揺れがおさまった瞬間、動いた。同時に聖と緋葬架も動く。銃弾の軌道をかわし、あるいはナイフではじいて軌道をそらし、距離を詰める。だが、向かっているという行為そのものが能力の発動条件にもなる。伸ばした手がすさまじい力で逆に弾かれる。その時、 「え?」 衣ずれの音がした。同時に、絶対に触れることなどできないと思っていたアイラの首筋に細い布がかかる。赤黒い色をしたそれは、アイラがその存在に気づくよりも前に斜め上へと引き上げられた。 「――――――」 人間の首には動脈が通っている。そこを絞めあげられればものの数秒で気絶、一分断たずに死に至る場合もある。無防備に首をつらされたアイラは速やかに気絶した。その細い布を掴んでいる手が伸びて、ごく自然な動作で聖のナイフを取り上げる。そして、それが決まったことでもあるかのように、その手はナイフをアイラの胸に沈めた。 血が飛び散る。 咄嗟に我に返って飛びのいた聖の鼻先を赤いしぶきがかすめた。 「………………所長?」 「無事でよかった。二人とも」 片手にまだ温かい死体を持って、所長――四十物谷宗谷はにこりと笑った。邪気の欠片もない安心したような笑みに、背筋が冷える。 「所長……ですよね?」 いつ現れたのか、事がすべて終わるまで分からなかった。こんなことは久しぶりだ。危険はないと分かっていても、本能が警鐘を鳴らし、理性のほうは現状についていけていない。 「え……? 倒した……んですか?」 「そうだよ。ナイフを汚した。ごめんね」 「安物だからいいです。いいから抜いて返そうとしないでください。捨てていいです」 「そう?」 宗谷が手を離すと、首に布を巻いたままの少女の死体が崩れ落ちる。よくみるとその布には見覚えがある。戦闘中に彼女が脱ぎ捨てたスカーフだ。 「上から苦戦してるのが見えたから急いで降りてきたんだけど、すっかり遅くなってしまったよ。ごめんね、聖」 そういう宗谷の服の端々は紅い。その色があきらかに今の死体から流れ出たものだけではないことに、聖は気づいた。何があったか聞こうとして、聖はやめた。代わりに別のことをいう。 「……所長って強かったんですね」 「運がよかったんだよ」 宗谷は手を伸ばすと、アイラの髪を簡単に整えた。少しだけ死に顔が安らかにみえるようになる。実際は何が起こったかも分からずに死んだのだろうが。 「服ってさ、よほど身体にフィットしてない限り、肌の上でこすれたり跳ねたり肌に当たったりするよね? 彼女の能力が周囲にあるものを無差別に弾き返す能力なら、服も弾かれるはず。でも、そうじゃないってことは彼女は自分の服と周囲の大気だけは、寄せ付けないものの対象から外してるんじゃないかなと思って」 だから彼女が捨てた服の一部で首を絞めたのだと、平然とした顔で宗谷は言った。罪悪感の欠片もなければ、他人の死に興奮した様子もなく、淡々と言う。その気持ち悪さが宗谷という人間をよく示している。すべての人間に興味を持ち、人間でありながら人間でない残虐さに憧れ、人間と化け物の境界を探って悦ぶ。あまりいい趣味ではない。 「さて、時間がない。緋葬架」 宗谷が放り投げた宗谷自身と聖の荷物を緋葬架は片手で受け止めた。 「それを頼むよ。僕はこっちを運ぶから」 「当然ですわ。重いものを運ぶのは男の仕事です」 「あの、すごく嫌な予感ってうおっ!?」 宗谷は軽々と聖を肩に担ぎあげた。傍からみると誘拐風景である。 「ちょっ、どこにそんな力があるんですか!? 所長!」 「それは戦斧なんて重量武器を主力武器にしているお方に言う言葉ではないですわ。所長は見た目は、うざい長髪の根暗悪趣味男ですが、筋力と体力はその辺のマッチョには劣りません」 「はは、酷い言われようだ」 あきらかに悪口を言われているのに、宗谷は笑っている。器がでかいわけではない。自分に対する対外的評価に関心がないだけだ。 「所長、たまには怒ったほうがいいですよ。あと、自分で歩けます」 「この出血で全力疾走は無理だね。君はちょっと黙っていたほうがいいよ。舌噛むから」 そう言うと、宗谷は全力で走りだした。緋葬架もそれに続く。直後、つい先ほどまで下にいた本社ビルがとうとう崩壊を始める。それに合わせるように、残っていたすべてのビルが火を噴いた。 「!?」 「緋葬架、全力疾走」「してますわ!!」 まるでシューティングゲームのような動きで二人は瓦礫をかわし疾走する。しかし、担いでいる怪我人のことは二の次のようだ。振りまわされて、聖はちょっと意識が遠のきかけた。完全に遠退かなかったのは、平素の訓練のおかげだろう。その良しあしはともかくとして。 ふいに視界が開けた。建物と瓦礫の山がなくなり、広い道路が出現する。その道路もひび割れだらけであちこちに壊れた車が止まっているが、少なくとも頭上からの落下物は今はない。 「所長! こっちだ!!」 「飛び、乗、る……がんば、って」 声がした。音源でゆっくりとジープが動きだす。なぜか扉は全開だ。そこにはすでに撤退していたジョフと揺蘭李が乗っている。 「まったく、まるでアクション映画ですわ」 文句を言いつつ、緋葬架は飛びあがった。そのまま、車の屋根に着地する。しかし、聖を担いでいる宗谷はそうはいかない。 嫌な予感がした。聖は早々に自分の運命を予感し、身体を固くする。 「ジョフ、ハンドル離すなよ?」 そう叫んで、宗谷は聖を車内に向かって投げいれた。 「うそぉおおおおおおおおお!?」 成人男性(怪我人)が軽々と中を舞、そして狙い違わずあけ放たれたドアから内部に突っ込む。反動でずり落ちそうになったが、そこは揺蘭李が退きいれ事なきを得た。そして宗谷自身は地面を蹴ると、窓枠を掴んで車の側面に取りつく。次の瞬間、加速したジープはドームシティの入り口を飛び出した。背後でひときわ大きな爆発音が起こる。爆風で車が煽られた。 「うわぁ! しょ、所長!?」 「はいはい、止まったら死ぬよ?」 脅しでもなんでもない事実に、ジョフは振り向くことなくアクセルを踏み込んだ。みるみるうちに、近隣唯一の都市だったアンジュが遠ざかっていく。夜空が赤い。 「全員、首尾はどう?」 「書類は死守しましたわ」 聖の荷物の中から書類ケースを取りだして、緋葬架は胸を張った。他の所員は笑みを浮かべて見せることで答える。 「そっか。そっか。これだけやって怪我人一人なら、たいしたものだ」 「一応……私、と、ジョフ……も、怪、我したけど、緋葬架……も?」 「まあ、無傷では御座いませんが、業務に差し支えるほどでも御座いませんわ」 全員の無事を確認して、そこでやっと5人は肩の力を抜いた。 「きつ……この人数で城攻めはきつい…………」 「あはは、無事で何よりだよ」 ぐったりと椅子に身体を投げ出したのは、聖と揺蘭李。まだ余裕が残っているのが宗谷と緋葬架。運転のため力を抜けないのがジョフだ。 「眠……早、く、帰る」 「そうだね。帰ろうか。学園都市へ」 その日、東南アジアの地図から一つの都市が消滅した。この事件は瞬く間に世界を駆け巡り、しかし一部の人間をのぞいてはすぐに忘れられた。これだけ規模の違う組織同士の紛争でこの結果は珍しいが、そうでないならありふれたものだからだ。ただし、これ以降、四十物谷調査事務所は油断できない調査機関として業界内でのみ飛躍的に知名度を上げることになる。 * * 「うわぁ、凶悪」 本音全開の一言が、パート社員の口からこぼれた。うんうんと周囲のアルバイターや契約社員たちも頷く。 「うちの事務所は、戦争屋でも傭兵でも殲滅屋でも掃除人でもないんですよ?」 「爆破なら本社ビルだけで十分じゃありませんか」 「資料だけ盗んで脅迫するとかもっと平和的な手もあると思うんっすけど」 微妙に不穏な台詞もまざっているが、概ね否定的な意見が相次ぐ。緋葬架は宗谷に代わって答えた。 「昔の人は良いことをいいました。根から断つ、と」 「そういうところが凶悪なんですよ」 しかし残念ながら、その凶悪な考え方のほうが学園内では多数派だったりする。 「っていうか、その一件。当時の契約社員とかは何してたんです?」 「ああ、武闘派の人は都市への道を封鎖したり、取りこぼしの対処に当たったり。学者は留守番」「当たり前です」 腕を組んで宗谷は椅子にもたれた。負荷にぎしりと椅子が音を立てる。 「ま、そんな感じで昔話終了。案外とつまらない話だったろう?」 「つまらないというか、予想通りというか、ある意味予想の斜め下というか――――四十物谷所長って強かったんですね。後、正月さんって案外役に立ってなかったんですね」 「ちょっとまて。今の話で何故その結論に至る?」 バイトの言葉に、立ち去りかけていた聖は戻ってきた。えーともあーともつかない声がアルバイターの間から上がる。 「だって強敵出ると役立たずじゃないですか」 「俺は一応非戦闘員。潜入と撤退専門」 「格好悪い……」 「うるせえよ」 「まあまあ、そういうものではないですよ」 珍しくファヒマが口をはさんだ。聖はほっとする。が、 「ミミズやオケラ以下の働きしかしていないとはいえ、彼だって好き好んで無能なわけじゃないんですからね」 「フォローしてるように見えるが……誰もそこまでは言ってないからな、ファヒマ。お前が一番貶してるじゃねえか」 澄ました顔で、ファヒマは明後日の方向を向いた。緋葬架と宗谷は聞こえなかったふりをして聞き流す。微妙な空気が流れた所内を小さな足音を立ててプレーリードックが走り去っていった。所員の一人が飼育しているものだ。 「……で、その後マジでおとがめなしだったんですか?」 「んー、一応ね。それにあってもまあ、どうにかなるものだよ?」 普通はどうにもならない。一体どんなやり取りがあったのかを想像して、その場の空気が冷えた。 「まあ、その辺は冗談として君たちだって手段と理由さえあればこれくらいのことはできてしまうものだよ?」 「出来てしまったら大変だと思いますよ?」 少なくとも都市の数が激減することは間違いない。ただでさえ、この学園の生徒は方々で騒動を引き起こしているというのに、そうなったら学園全体の評価にも関わらってしまう。渋い顔を浮かべるアルバイターを見て、宗谷は爆笑した。 「そんなに真剣に悩まないでくれよ? できるかできないかの話で、やれとは言ってないんだから。うちは調査会社だよ? 相手が牙をむかない限りは、刃を突きつけ合う必要なんてないんだよ」 「の割には凶暴ですけどね」 「仕方がないさ」 くすくすと宗谷は笑った。 「動物でさえ、機会があれば敵を殲滅しようとする。人間はなおさらだ。死にたくないなら殺すしかないし、殺したなら殺し続けるしかない。ま、その業をどこで食い止めるかというので真の能力が問われるわけだけど、と」 宗谷は顔を上げた。同時に緋葬架が銃を抜く。それを見て、大慌てでアルバイターたちは机の下にもぐりこんだ。直後、マシンガンを持ったスーツの男がドアから現れる。待ち構えていた緋葬架と聖の手によって、男はマシンガンをぶっ放すよりも前に額と胴に穴を開けてぶっ倒れた。後続がいないことを確認して、聖は銃の安全装置をかけ直す。 「物騒なお客さんだね。誰か手を貸してくれ。あそこに落ちてると他の客が入れない」 「聖、男なんだからやりなさい」 ためらいなくファヒマは聖を指名した。聖も特に反発することなく、半ば予想していたらしい動きで死体を撤去し始める。死にたてのそれはまだ血も塊切っていない。 「誰か洗剤持ってこい。あと、死体袋」 「ちょっと、硝子割れてるよ。ドア蹴りとばして入ってきたな、こいつ」 速やかに掃除を始める所員を見ながら、そろそろとアルバイターたちは机の下から這い出す。そして、ため息をついて顔を見合わせた。 「…………やっぱり、凶悪だ」 おわり
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ID.210 カットマンV2 ID チップ名 属性 攻撃力 レア度 容量 コード 210 カットマンV2 - 200 4 50 C* 効果 備考 穴の上に出現 穴の上を攻撃が通過 障害物が攻撃の邪魔になる場合 × ○ 障害物にダメージを与える コード 入手法 C カットマンV3 * -
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サイレント・テイクダウン △ (敵に見つかっていない時) ハーレークィンのみ使用不可 ノックアウト・スマッシュ サイレントテイクダウン中に□ ハーレークィン、レッドフードのみ使用不可 ラウド・テイクダウン □ (敵に見つかっていない時) ハーレークィンのみ使用可能 ドロップダウン・テイクダウン 敵の上から△ サイレント・テイクダウン扱いレッドフードのみ使用不可 スイングダウン・テイクダウン 敵の上空から△敵の上空から□ (レッドフード) △ サイレント・テイクダウン扱い レッジ・テイクダウン 足場からぶら下がって△足場からぶら下がって□ (レッドフード) △ サイレント・テイクダウン扱い コーナーカバー・テイクダウン コーナーカバー中に△ サイレント・テイクダウン扱い 格子テイクダウン 床格子内から△床格子内から□ (バットガール、レッドフード) △ サイレント・テイクダウン扱い 壁格子テイクダウン 壁格子内から△ 天井格子テイクダウン サービスハッチの下から△ シーリング・テイクダウン ガラス天井やサービスハッチの上から△ 木製の壁テイクダウン 破壊可能な木製の壁の裏側から△ ウィンドウ・テイクダウン 破壊可能なガラス窓の裏側から△ ハンギング・レッジ・テイクダウン 縁の真下にいる敵に縁の上から△ バットマン、ロビン、ナイトウィング、アズラエルのみ使用可能。 引き込みテイクダウン しゃがめばギリギリ隠れられる高さの障害物から△ バットマンのみ使用可能。 スモーク・テイクダウン 煙の中で△ (敵に見つかっていない時) インバーテッド・テイクダウン ヴァンテージポイントの上から△ バットマン、アズラエル、バットガールのみ使用可能。 グラップネル・テイクダウン グラップリング中に△ ラインランチャー・テイクダウン ラインランチャーで敵に向かって移動中に△ アイススマッシュ・テイクダウン フリーズブラストで凍った敵に△ フィアー・マルチ・テイクダウン □ バットマン、ロビン、ナイトウィング、アズラエルのみ使用可能。 レッジ・フィアー・テイクダウン □ バットマン、ロビン、ナイトウィング、アズラエルのみ使用可能。 ダブル・フィアー・テイクダウン □ バットマン、ロビン、ナイトウィング、アズラエルのみ使用可能。 ダブルレッジ・フィアー・テイクダウン □ バットマン、ロビン、ナイトウィング、アズラエルのみ使用可能。 ダブル・テイクダウン 敵2人が隣り合っている時に□ バットガール、レッドフードのみ使用可能。
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ウォルト・ホイットマン ホイットマン詩集 (海外詩文庫)
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【ゲーム】シムシティ(SFC) 【作者名】ひできち@実況 【完成度】完結(08/05/31~08/07/05) 【動画数】12+1 【part1へのリンク】 【マイリストへのリンク】http //www.nicovideo.jp/mylist/6982404 【備考】 みどころ +... 名前 コメント
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破天荒筋肉!(後編) ……………………………………………………………………………… ……………………………………………………………………………… ……………………………………………………………………………… ……………………………………………………………………………… ……………………………………………………………………………… ……………………………………………………………………………… 時が未来へ進むと誰が決めた? たしか過去にそう歌った歌があった。 時間こそは過去から現在へ、現在から未来へ進む不変の真理にして不滅の流れだ。 誰にも逆らうことのできない究極の真実。 しかし、時は止まるのだ。 ある一定の空間で一定の条件を満たせば、時は止まる。 現に今、四人を包んでいる空間はまさに時を止めていた。 真人も、トーニャも、杏も、ウエストも皆等しく。 そしてある程度の時間が経って、ようやく時は動き出した。 一番最初に動いたのは、やはりというべきかトーニャだった。 満面の笑顔が心なしか怖い。 「ツッコんでいいですか? ツッコんでいいですよね? むしろツッコまれるためにあんなこと言ったんですよね? 筋肉勝負は辞退しましたよね。 なのに、いつまで私に筋肉の称号を押し付けるんですか? 『筋肉の妖精』ってかわいく言ったつもりなんですか? 全然嬉しくありませんよ。 むしろ殺意が漲ってきましたが? というか、私だけ名前のノリが違いますよね? なんですかマッスルトーニャって? しかも絶対☆をつけたでしょう? マッスルトーニャじゃなくてマッスル☆トーニャでしたよね? メディアミックス展開目指して絶賛宣伝中なんですか? って! いうか! 名乗れと言われたからには名乗らねば筋肉がすたるって、アンタはいつの時代の戦国武将ですか!? 私がいいって言うまで隠れてろって言ったでしょうがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」 「うがああああああああああああああああああ!!!」 「てけり・り!」 最後は笑顔から鬼の表情に変わっていた。 トーニャがキキーモラを操作して真人の体を縛って、限界まで上空に上げる。 人工的にとりつけられた人妖能力『キキーモラ』はゴールポストを持ち上げ、さらにそれを軽々と投げつけることも可能なほどの力を発揮する。 男一人の体重を持ち上げることなど、トーニャには朝飯前だ。 「取り消しますか? 取り消しますよね? むしろ取り消さないと不幸な事故が起こりそうですよ?」 「わ、分かった。 取り消す。 取り消すから!」 思わず、空中遊泳を楽しむことになった真人が必死の形相で言う。 その言葉を確認して、トーニャはゆっくりと真人を地上に降ろした。 無事に地に足が着いた事を確認した真人は荒く息をついた後、新たな名前をトーニャに提案する。 ちなみに、今の二人にとって、杏とドクターウエストの存在など些細な問題だった。 「じゃ、じゃあミラクル☆トーニャとかマジカル☆トーニャとかはどうだ?」 「恥ずかしい二つ名もミラクルもマジカルもいりません! っていうか、マジカル☆は一体どこから出てきた!? 魔法なんて使えんわ!」 「だってよ、お前の名前、長すぎて分かりにくいじゃねぇか。 トーニャ・安藤さんちにきな、だったか? だから短く分かりやすくだな……」 「トーニャ・アントーノヴナ・二キーチナです! なんで本名で安藤さんちに来ないか?って誘わなければいけないんですか!? それと、分かりやすくしなくていい! トーニャだけで十分です!」 果てしなく続くかと思われるやり取り。 今、彼らは間違いなく、人生で一番無駄な時間を過ごしていた。 そしてさらに事態は混迷を極める。 この世で一番、無視される事を嫌うドクターウエストが、絶賛放置プレイな現状に異論を唱えないはずが無い。 「わ、我輩を無視して話を進めるでな~~~~~~~~い!!!」 ギターをかき鳴らして二人の注意を向けようとする。 が、壊れて弦が切れたギターは音を鳴らすことは無い。 ならば、と取り出したフォルテールも、やはり魔力を持たないウエストの手では旋律を奏でることもなかった。 真人とトーニャのやり取りが一向に終わらないのも、ウエストのプライドを傷つけた。 髪を掻き毟り、涙と鼻水を撒き散らしながら叫ぶウエストの様はやはりキチ○イである。 あっちでは筋肉談義。 こっちでは泣き叫ぶキチガ○。 救世主が現れるのはいつのことだろうか。 そして、そんな事態を収拾したのは、意外にも杏とダンセイニだった。 「いい加減にせんかアンタ達ーーーーーーーーーーーーー!」 「てけり・り!」 ダンセイニが筋肉チョッキから顔を出して真人とトーニャの間に割って入る。 そして、他人に聞かれる事を承知で、杏のコルト M1917の弾丸が火を噴いて夜明けの空に消えていった。 ◇ ◇ ◇ 「という訳で、残念ながら私達はあなた方の知り合いとは誰一人会っていませんね」 「こっちも会ってないわね」 頭脳労働が苦手な真人と、口を開けば余計なことまでしゃべるウエストを放っておいて、トーニャと杏をメインにして、情報交換は始まった。 まずはお互いの目的の確認。 念のため、殺し合いを肯定するかしないかを確かめ、知り合いの情報、敵意ある人物、探している人物を教えあい、武器の確認もする。 次に、歩いたことのある場所、訪れた施設があるかなどの情報を交換し、少しでも他の参加者との輪を広げるべく意見を交わす。 細かい部分への言及も決して忘れない。 重要な情報を知り、情報を制することこそ、生き延びるための第一歩なのである。 現状で確認できるだけの情報を交換し終わって、さぁこれからどうしようか、と女二人が考え始めたとき、ウエストが不意に口を開いた。 「マッスル☆トーニャよ、さっきの紐はなんであるか?」 「その名前で呼ばないで下さい」 「いいから答えるのだ。 今後の行動に影響を与える重要なことなのである」 「……ふぅ、今更隠しても仕方ありませんね。 私は人妖です。 そして、さっきの紐らしきものは私の能力です」 トーニャは息をついて、観念するように切り出した。 人妖であることを一般人に知られれば、途端に迫害の標的にされる。 人を軽々と持ち上げたあの紐――キキーモラを手品だと隠すのは無理がある。 迫害したいのは勝手だが、今は非常事態だ。 これで、人妖なんかと一緒に行動できるか! と怒り出すような底の浅い人間なら、トーニャも心置きなくこの集団から離脱するつもりであった。 しかし、トーニャの思惑とは別に、人妖と聞いて、三人が返したのはまったく予想外の対応だった。 つまり、「人妖ってなに(なんだ)(なんであるか)?」というもの。 トーニャも驚きを隠せない。 人妖のことを知らない人間など、現代の日本にいるとは思えない。 ウエストはともかく、杏も真人も日本人と答えた。 ならば、人妖――後天的全身性特殊遺伝多種変性症のことは一般常識として知ってないとおかしいのだ。 ところが、杏も真人も人妖という言葉はおろか、神沢市のことさえ知らないという。 人妖能力者の監獄都市、神沢市まで知らないとは一体どういうことか? トーニャがさらに頭を悩ませていると、ドクターウエストがここぞとばかりに口を開いた。 「簡単なことだ、つまり我輩たちは異世界から連れてこられたのである」 ドクターウエストが、今まで自分の中で暖めていた自論を披露した。 「いくらなんでもそれは突飛すぎるのでは?」 「そんなわけ無いでしょう。 素質はあると思っていたけど、こうも馬鹿だとはね」 「異世界から連れてこられてなにか問題でもあるのか?」 それぞれの口調から放たれる否定の言葉の数々。 しかし、ウエストはめげずに自論を支える根拠を話し始めた。 「では、貴様らはアーカムシティを知っているか?」 三人とも首を振って否定。 では魔術のことは? これも否定。 大黄金時代にして大混乱時代にして大暗黒時代を迎えているアーカムシティ。 世界の中心はどこかと聞かれると、ウエストの世界の民衆は、子供から大人まで口をそろえてアーカムシティだと言うだろう。 片田舎に過ぎなかったアーカムシティを一代で大都市にまで育て上げた傑物、覇道鋼造。 強引勝つ無謀とも言える方策で数々の大成功を収めた人物。 この人物さえ知らぬのは、もはや非常識を通り越して無知の領域だった。 杏がアーカムシティを知らぬと言ったときから確証を深め、トーニャの人妖という言葉で、ウエストは自論の正しさを確信。 こうして、一気にその自論を説明したのだ。 「我輩は人妖など聞いた事の無いのである。 マッスル☆トーニャよ、人妖とは個人レベルでは隠すことであっても、世間全体では知られているのであろう?」 「ええ、人妖という言葉を知らないのは、まだ生まれたての赤ん坊か発展途上国の田舎の中の田舎くらいだと思います。 それからマッスルは止めろって言ってます」 トーニャの言葉にウエストは満足げに頷く。 「であろう。人妖などという言葉が世界の最先端を越えて、凡才どもを三周遅れにまでしている、大天才の我輩の耳に入ってこない方がおかしいのである! そんな存在がいたとすれば、我輩、とぉぉぉぉぉぉぉぉぉっくの昔に研究対象にしていたである。 マッスル☆トーニャよ、時給700円で我輩のモルモットにならぬか? 今なら、ブラックロッジの臭い飯が三食もれなく付いてくるのである」 「丁重にお断りします。 それと、いい加減にマッスルやめないと、その大天才様の脳みそが何色か確かめることになりますが?」 「トーニャ、これはこういう人物だから、放っておいて」 よほどマッスル☆トーニャという呼び方が印象的だったのだろうか。 ウエストは先ほどからトーニャのことはマッスル☆トーニャとしか呼ばない。 当然、その呼び方に大いに不満のあるトーニャとしては、断固呼び方を変えてもらいたいのだが、事態が事態なのであまり強くも言えない。 今回も、杏に抑えてと窘められ、不承不承引き下がった。 「さらにさらにさら~に! このダンセイニと呼んでいる生き物、ショゴスのことであろう? 貴様らの世界にこんな不思議動物は生息しているか?」 「てけり・り♪」 ダンセイニはその通りだと言わんばかりに、ゼリーのような触手を伸ばして振る。 どことなく愛らしさがある動きだ。 筋肉チョッキがなんとなく蛸壺のようにも見える。 ダンセイニはさらに、杏の方へ触手を伸ばしていく。 「わ、私になにか用?」 「たぶん、握手しようって言ってるんだ」 「握手? 軟体動物なのに随分と知能高いのね」 真人の横から解説を聞いて杏も感心する。 握手というなんとも人間じみたコミュニケーションに違和感を感じながらも、杏もおずおずと手を伸ばす。 最初に触った感想はともかく柔らかいの一言に尽きた。 しかもダンセイニは杏に握られた触手を上下に振り、本格的に握手する。 握手という人間のコミュニケーションをここまで心得ているあたり、杏が想像しているよりもずっと知能が高いようだ。 しばらく両手に振られた手をようやく離すと、杏の手にはダンセイニの体の一部であろうか、粘液がベットリついていた。 「うわぁ、これ後で洗わないと」 「てけり・り♪」 「へ? ってちょっと待って、待ってってば!」 どうやらダンセイニは杏のことを大層気に入ったようで、杏から離れようとしない。 さらに杏に向かって触手を伸ばし、杏に触れようとしている。 おそらく、ダンセイニなりのコミュニケーションのつもりだろう。 「てけり・り♪」 「やけに気に入られてますね」 「トーニャ、笑ってみてないで助けなさいよ!」 「おや、私にはじゃれ付く子供を撥ね付ける趣味はありませんよ」 「子供じゃないでしょ!」 「似たようなものですよ。 それではお楽しみください」 「ま、真人は!?」 「フンッフンッフンッ! 昨日できなかった回数の分も腹筋をこなさないとな。 フッフッフッ!」 真人は絶賛筋トレ中であった。 難しい話についていけないと感じたので、トーニャに許しをもらって筋トレ中なのだ。 「何で森のど真ん中で腹筋やってんのよ! ああもう、頼りたくないけど残りはウエストしかいない! ウエスト、この子を剥がしてよ!」 「つまり、我輩たちは異世界から連れてこられたのである!」 「なるほど、どうやら主催者は私達の想像もつかないような技術を持っているようですね」 「なんでトーニャと普通に元の会話に戻ってんのよ~!」 「てけり・り♪」 「では、あの二人の奥にはやはり、かなりの人物がいる可能性があると?」 「そうである。 このような武器を支給するあたり、反乱されても全く問題が無いと考えているのであろう」 真人と杏を放っておいて、トーニャとウエストの考察はさらに続く。 トーニャの持っているゲイボルクを手にとって見たウエストは、おもむろに語り始めた。 自身がアーカムシティで秘密結社ブラックロッジに所属し、破壊の限りを続けていたことを。 宿敵、大十字九郎との戦いの日々。 ブラックロッジを束ねる大導師、マスターテリオンの恐ろしさも余すところなく語った。 ウエストが悪人であることにトーニャは驚いたものの、ここでウエストを糾弾するのは愚策と考えてそのまま流す。 聞いた限り、ウエストは自分なりの美学を持って破壊活動を行っているらしい。 そして、今回の殺し合いはそんなウエストの美学に真っ向から反するものらしい。 ならば、下手に刺激して機嫌を損ねるより、あえてウエストの自分の世界での悪行に目をつぶり、手を貸してもらうべきだ。 「私達は途方も無い存在に喧嘩を挑もうとしているのかもしれませんね」 「なにを言っておるかマッスル☆トーニャ。 危険でない戦いに意味など無いように、弱っちいボスになぞ我輩は興味ないのである。 ここはやりがいを感じるべきであろう! 強大な敵を、友情、努力、勝利で打ち勝ち、その先に待つのは大・団・円! 空から光が降り注ぎ、天使が降り立って我輩を安息の地へ誘うのである! ああ、我輩疲れたよエルザ。 『アーカムシティのロボ』完結! って我輩死んでいるのであるか! やはりヒーローは最後に死んで悲劇を演出しないといけないのであるか!? ノンノンノン、我輩はそんなお約束に反逆する! 死の運命を覆し、生の未来を勝ち取り、我輩は生きるのである! ドクターウエスト先生の次回作にご期待を!」 ウエストのノンストップクレイジーマシンガントークは無視して、必要な情報だけ取り出して吟味する。 『チェルノボグ』がかわいらしく見えるほど、今トーニャたちが挑もうとしている敵は強大らしい。 しかも、言峰と神崎のバックにはウエスト曰く、マスターテリオンクラスの人物か、あるいはマスターテリオン本人、 トーニャの知識で言えば、八咫烏クラスかそれ以上の存在が控えているらしい。 神話上の武器を軽々しく支給し、あまつさえ異能力者や神話の武器に制限まで課し、異世界への干渉能力すら持つ人物。 考えれば考えるほど絶望的な反抗だ。 当初のとおり、殺し合いに乗って優勝を目指した方がまだ効率がいいのかもしれない。 我知らず、トーニャはその言葉を口に出していた。 「ひょっとしたら、反抗するより優勝を目指した方が、生存確率は高いのかもしれませんね」 「? 優勝してどうするのだ?」 「? どうするって、元の世界に帰らせてもらえばいいのでは?」 「何を勘違いしておるのだ? 残り一人になるまでやるとは言っていたが、その最後の一人を無事に帰すとは一言も言ってなかったであるが?」 「…………………あ」 「…………………な!」 「…………………ちょっと待って!」 考察に参加してなかった二人もその会話を聞いて、一斉にウエストの元へ駆けつける。 真人は腹筋を中止して、杏はダンセイニとじゃれるのを中止した。 三人の顔はいずれもウエストに説明を求めている。 ウエストもその要求に答えて、説明を始めた。 「我輩は全て覚えているのである! あの暗い空間で起こったすべての出来事を!」 ウエストは意識を取り戻してから、あの空間での出来事をすべて記憶している。 時には身振り手振りを加えながら、言峰や神崎の言葉、態度、その他の参加者の反応まで鮮明に再現した。 目が覚めたと思ったら、暗い空間にいて、次の瞬間には言峰と神埼が現れてゲームとやらの説明。 状況が理解できないうちに出た初めての死者、そして異能を持つ双子のあっさりすぎる死。 さらに、首輪の機能を説明するために選ばれた見せしめの女の子と、それを庇って死んでいった知り合いらしき女性との死。 次の瞬間にはもう参加者はゲームの会場にいた。 訳の分からない展開の連続、日常から非日常へと足を踏み入れたことに対する違和感。 それらに脳が適応する前にもう島へと送られていた。 参加者は精々、一人になるまで殺しあうということや、禁止エリアなどの重要な情報を覚えるので精一杯だっただろう。 しかし、ドクターウエストだけは違った。 彼は間違いなく天才の一人だった。 状況を理解するので精一杯だった有象無象の参加者の中で、あの時、状況を素早く理解し、状況に対処していた男がドクターウエストその人だ。 主催者の言葉を一字一句違わずに覚え、いつでも記憶のタンスから引き出せるようにしておいたのである。 魔術を使えないながらも、魔術結社ブラックロッジに勧誘されたのは決して伊達ではない。 「じゃ、じゃあ残り一人になったら、その一人はどうなるのよ?」 「おそらく、帰れる可能性のほうが低いであろうな」 「だから、どうなるのかって聞いてるのよ?」 「生贄。 現状、考えうる限りではこれが最も可能性が高い」 不安げな様子で聞き返す杏に、ウエストは考えていた答えを示した。 古今東西、呪術や宗教的な儀式において定番の手法だ。 だが、生贄という単語に納得がいかなかったのか、杏は聞き返す。 「生贄? 生贄なら適当に一人選べばいいじゃないの? なんでわざわざ殺し合いをさせるのよ」 「蟲毒を知っているか、凡骨リボン?」 「何よそれ? 知らない」 自らは魔術を行使できないが、自分の作ったものに魔術を使わせる事は可能なドクターウエストは、東洋の魔術、呪術体系も大体は理解している。 ウエストが蟲毒の説明を軽く杏にしてやると、杏はさらに絶望的な顔をした。 もしも、ウエストの推測が正しいのなら、今の杏たちは蟲以下の価値しか求められてないのだ。 「でも、それならどうして私のような一般人が選ばれたのよ。 強い人がいい生贄になるなら、私なんか到底及びじゃないと思うんだけど」 「そこから先は私が説明しましょう」 杏の新たな疑問に今度はトーニャが語り手となって答える。 元々、この説明は杏が聞いてこなくてもするつもりだったので、一石二鳥とも言える。 「生贄に関しては、肉体的な強さはもちろんですが、精神的な強さの方が重要ではないのでしょうか? 違いますか、ウエスト?」 「いや、間違いない」 「あぁん! 俺の筋肉は役立たずと言いたいのか?」 「ちょっと黙っててくださいグッピー。 肉体的な強さのみで生贄が決定されるなら、強い人だけを呼び、殺し合わせればいいです」 「イエーーース! 極端な話、天下一武○会でも開けばいいのである!」 トーニャの言いたいことはこうだ。 肉体的に強い人と、精神的に強い人は必ずしもイコールでは結ばれない。 だから、今回は生贄選抜のために、一般人も異能力者も等しく参加させられたのだろう。 しかし、そのまま戦わせても、異能力者が一般人を蹂躙する光景しか思い浮かばない。 そこで、主催者は異能力者に制限を課した。 つまり、主催者は一般人にこう言っているのだ。 死力を尽くし、支給品を有効活用し、役に立つものはすべて利用して、仲間の死を乗り越えて、異能力者、超人を打ち破れ、と。 逆に異能力者、超人にはこう言っているのだ。 幾多の屍を乗り越えて、一般人の小ざかしい策を純粋な力で押しつぶし、我が元まで駆け上がって来い、と。 そして、最後まで残った精神的な強さを持つ一般人、または異能力者や超人を生贄に、何かしらの儀式をたくらんでいるのだ。 その儀式とやらの正体は今はまだ一切不明。 そもそも、この殺し合いが蟲毒という仮説が崩れれば、この推測もまるで意味がなくなってしまう。 「聞けば聞くほどやべぇな。 早いところ鈴と理樹を探しにいこうぜ」 「ええ、それでは私達はこれで失礼します。 貴方たちの御武運を祈ります」 「てけり・り」 ウエストと杏と同盟を組んだ事を確認して、真人とトーニャとダンセイニは立ち上がる。 真人たちは主に仲間集めを担当。 ウエストたちは主に首輪の解除を目指して行動するつもりだ。 強大な主催者に立ち向かうには、一人でも多くの戦力が必要。 そして、この参加者を抑える最大の枷である首輪さえ外せれば、必然と主催への反抗作戦に参加してくれる人も増えるはずだ。 どちらも、同じくらい重要な任務である。 夜明けは近い。 今日上がってくる太陽が人生最後に見る太陽となるかは分からない。 ただ一つ言えることは、全身全霊を掛けて、絶望に立ち向かえば、明日も太陽を見られる可能性が高くなるということである。 「トーニャ、これあげる」 背中を見せて歩き出したトーニャに、杏がなにかを差し出す。 それは中にドロリとした真紅の液体が入ったアンプルが1本。 アンプルには智天使薬――ケルプ、と書いてある。 説明書もついてるようでトーニャは杏からもらって読んでみた。 『智天使薬は第参種人妖追跡機関、ドミニオンの戦闘隊員が使用する薬。 神沢市などで出回っている粗悪品と違い、はるかに濃度が高い。 人妖がこのアンプルを使用すると、一時的に人妖能力を高めることができる。 しかし、その代償として、使用して一定時間が経つと、激しい疲労に見舞われる』 「人妖でないと効果ないみたいだし、あげるわ」 「ケルプドラッグとは違うんですか……まぁ、あのドミニオンが使ってるみたいだから信頼はできると思いましょう。 ありがたくいただきます」 「ちゃんと生きてまた会おうね」 「ええ、生きてまた会いましょう」 「てけり・り……」 「うん、ダンセイニも会おうね」 手渡されたアンプルをデイパックにいれ、今度こそトーニャと真人は歩く始める。 杏と別れることが寂しいのか、ダンセイニはどこか寂しそうだった。 ここから四人は二人ずつで行動。 待ち合わせはどこかなど決めておきはしない。 禁止エリアに指定された場合や、集合場所に留まることにこだわって、命を落とすことになれば冗談ではすまないからだ。 だから、今はこれで十分。 いつ再会するとも分からない同盟。 そんな不確かな約束のみで作られた繋がり。 けれども、きっと、4人はいつかまた出会う。 再会したときの人数は果たして今よりも多いのか少ないのか、それとも現状維持なのか、今は誰にも分からない。 【D-3 北東部 森 早朝】 【井ノ原真人@リトルバスターズ!】 【装備:マッチョスーツ型防弾チョッキ@現実【INダンセイニ@機神咆哮デモンベイン】】 【所持品:なし】 【状態:走り回ったことによる疲労小、胸に刺し傷、左脇腹に蹴りによる打撲】 【思考・行動】 基本方針:リトルバスターズメンバーの捜索、及びロワからの脱出 0:ボス狸と行動。筋肉担当。 1:理樹や鈴らリトルバスターズのメンバーや来ヶ谷を探す。 2:主催への反抗のために仲間を集める。 どこに行くかはまだ不明 3:ティトゥス、岡崎朋也、クリス、ドライを警戒 4:また筋肉の世話になっちまったぜ 【備考】 ※防弾チョッキはマッチョスーツ型です。首から腕まで、上半身は余すところなくカバーします。 ※現在、マッチョスーツ型防弾チョッキを、中にいるダンセイニごと抱えています。 ※真と誠の特徴を覚えていません。見れば、筋肉でわかるかもしれません。 ※真人のディパックの中はダンセイニが入っていたため湿っています。 ※杏、ドクターウエストと情報交換をしました 【ダンセイニの説明】 アル・アジフのペット兼ベッド。柔軟に変形できる、ショゴスという種族。 言葉は「てけり・り」しか口にしないが毎回声が違う。 持ち主から、極端に離れることはないようです。 どうやら杏のことを気に入ったようです 【アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ@あやかしびと -幻妖異聞録-】 【装備:【ゲイボルク@Fate/stay night[Realta Nua]】 【所持品:支給品一式、不明支給品0~2、スペツナズナイフの刃、智天使薬(濃)@あやかしびと -幻妖異聞録-】 【状態:健康、走り回ったことによる疲労小】 【思考・行動】 基本方針:打倒主催 0:たまご風味のグッピーと行動。頭脳担当。 1:神沢学園の知り合いを探す。強い人優先。 2:主催者への反抗のための仲間を集める。どこに行くかはまだ不明 3:ティトゥス、岡崎朋也、クリス、ドライを警戒。アイン、ツヴァイも念のため警戒 【備考】 ※制限によりトーニャの能力『キキーモラ』は10m程度までしか伸ばせません。 先端の金属錘は鉛製です。 ※真人を襲った相手についてはまったく知りません。 ※八咫烏のような大妖怪が神父達の裏に居ると睨んでいます。ドクターウエストと情報交換をしたことで確信を深めました ※杏、ドクターウエストと情報交換をしました 【藤林杏@CLANNAD】 【装備】:コルト M1917(6/6) 【所持品】:支給品一式、予備弾28、ランダム支給品0~1(確認済み) 【状態】:右手首に重度の捻挫(ある程度治療済み)掌と膝にひどい擦過傷(応急処置済み) 【思考・行動】 基本:朋也に謝る、ウェストに謝罪させる 1:朋也を探す(多分自分が来た方向=西?) 2:可能ならウェストの手助けをする。 3:首輪解除を目的に行動。どこに行くかは不明 【備考】 ※捻挫はウラジミールのTシャツ@あやかしびと -幻妖異聞録-によりある程度的確に処置されています。 ただ三角巾のような形で固定されているので、右腕はそのままでは使えません。 ※空元気交じりですが、冷静さを取り戻しました。 ※クリス・ティトゥス、ドライを警戒。朋也については複雑な心境 ※ウェストとお互いの世界や知り合いについて情報交換しました。 突っ込み連打の甲斐もあり、魔術やロボについても一応納得しました。 ※トーニャと真人と情報交換しました 【ドクター・ウェスト@機神咆哮デモンベイン】 【装備】:秋夫のバット@CLANNAD、フォルテール(リセ) 【所持品】支給品一式 、フカヒレのギター(破損)@つよきす -Mighty Heart- 【思考・行動】 基本方針:我輩の科学力は次元一ィィィィーーーーッ!!!! 1:設備・器具の入手 2:首輪のサンプルが欲しい 3:首輪の解除 4:フォルテールをあらゆる手を使って弾いてみせる 5:とりあえずは杏についていく 【備考】 ※マスター・テリオンと主催者になんらかの関係があるのではないかと思っています。 ※ティトゥス、岡崎朋也、クリス、ドライを警戒しています。 ※フォルテールをある程度の魔力持ちか魔術師にしか弾けない楽器だと推測しました。 ※杏とトーニャと真人と情報交換しました。参加者は異なる世界から連れてこられたと確信しました。 063 破天荒筋肉!(前編) 投下順 064 ときめきシンパシー 時系列順 064 ときめきシンパシー アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ 000 [[]] 井ノ原真人 000 [[]] ドクター・ウエスト 070 リセエンヌ(前編) 藤林杏 070 リセエンヌ(前編)
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ジャスティスバトルロワイアル 「正義と悪はどちらが強いのか」 そんな単純かつ深淵なテーマを元にバトルロワイヤルを行うリレー小説企画。 ただし1人の生き残りを賭けた従来のパロロワとは異なり、3つのグループに別れてのチーム戦という特異な形になっており(自分がどのグループにいるかは教えられていない)、チームによって勝利条件も違う。 参加者もテーマに見合う『正義』と『悪』を題材にしたものが多く漫画、アニメ、ゲーム、ノベルス、特撮とジャンルは幅広い。 参戦作品21、参加者は60名。 OPコンペ終了。 2010年8月6日、0 00より予約開始。 特徴 最も顕著なのは参加者があらかじめ正義枠/悪枠/一般人枠に選別されていることであろう。 正義枠に正義のためなら殺しを厭わないような危険人物がいたり、悪枠でありながら積極的に殺しに乗らなかったり特定の人物は保護したり、一般人に下手すれば悪枠よりもタチの悪いのがいたりと、様々なタイプの「正義」と「悪」が揃っている。 自分がどの陣営なのかを図っていく頭脳ゲームも見どころの一つであろう。 というより悪枠はマーダーよりむしろ知能犯や扇動者が多く、一般人や正義枠がその毒牙にかかる様を期待する住民がいるとか、なんとか。 主催者 オジマンディアス@ウォッチメン 参加者 【正義】17/17 アーチャー@Fate/stay night 衛宮士郎@Fate/stay night L@DEATH NOTE 金田一一@金田一少年の事件簿 空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 黒神めだか@めだかボックス 五代雄介@仮面ライダークウガ 高町なのは@魔法少女リリカルなのは テンマ@聖闘士星矢 冥王神話 天馬賢三@MONSTER バットマン@バットマン 東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険 本郷猛@仮面ライダーSPIRITS 武藤カズキ@武装錬金 夢原のぞみ@Yes! プリキュア5 ロビンマスク@キン肉マン ロールシャッハ@ウォッチメン 【悪役】17/17 悪魔将軍@キン肉マン 雨流みねね@未来日記 折原臨也@デュラララ!! 吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険 言峰綺礼@Fate/stay night ジョーカー@バットマン 高遠遙一@金田一少年の事件簿 蝶野攻爵@武装錬金 DIO@ジョジョの奇妙な冒険 パンドラ@聖闘士星矢 冥王神話 V@Vフォー・ヴェンデッタ ポイズン・アイビー@バットマン 結城美知夫@MW 夜神月@DEATH NOTE 杳馬@聖闘士星矢 冥王神話 ヨハン・リーベルト@MONSTER ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ 【一般】26/26 相沢栄子@侵略!イカ娘 相沢たける@侵略!イカ娘 天野雪輝@未来日記 アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのは イカ娘@侵略!イカ娘 ヴァンプ将軍@天体戦士サンレッド ヴォルフガング・グリマー@MONSTER 内田かよ子@天体戦士サンレッド 我妻由乃@未来日記 賀来巌@MW 剣持勇@金田一少年の事件簿 サンレッド@天体戦士サンレッド ジェームズ・ゴードン@バットマン 月村すずか@魔法少女リリカルなのは 七瀬美雪@金田一少年の事件簿 ニナ・フォルトナー@MONSTER ハインリッヒ・ルンゲ@MONSTER 人吉善吉@めだかボックス 平坂黄泉@未来日記 藤村大河@Fate/stay night 松田桃太@DEATH NOTE 間桐慎二@Fate/stay night 武藤まひろ@武装錬金 メロ@DEATH NOTE 夜神粧裕@DEATH NOTE 竜ヶ峰帝人@デュラララ!! 60/60 外部リンク 支援サイト ジャスティスバトルロワイアル@wiki ジャスティスロワ専用掲示板(閉鎖) スレッド ジャスティスバトルロワイアル Part1 ジャスティスバトルロワイアル Part2 ジャスティスバトルロワイアル Part3
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今日からヒットマン コンビニ(コンビニエンスストア) コメント 週刊漫画ゴラクに連載中のむとうひろしの漫画。第1巻あとがき漫画によれば、同誌編集者との居酒屋での雑談から3回分の連載が決まったものの、アシスタント不足だったため2回分の連載継続も危ぶまれたという。好評により連載化。単行本は2011年6月現在20巻発刊。 また、武田真治主演で映画化された。 コンビニ(コンビニエンスストア) モロバレル:キノコ頭 コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
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概要 全四号。2007年 ワイルドストーム世界から帰還したキャプテン・モナーク(レイ・パルマー)が、平行世界を制覇すべく、各世界から同一人物達をつれさらってきて戦わせ生き残った者達の軍団を組織しようと画策。 一言でまとめたら「ぼくのあつめたさいきょうのJLA」を作ろうとする話。 ライター&アーティスト ライター キース・シャンパン ペンシラー Scott McDaniel 主要登場キャラクター キャプテン・モナーク(レイ・パルマー) バットマン アース19 1880年代に活動している、切り裂きジャックと戦ったバットマン。 アース40 WW2の頃に活動しているバットマン アース43 「バットマン&ドラキュラ:レッドレイン」の世界で戦うバットマン スーパーマン アース16 クリストファー・ケント:ゾット将軍の息子 アース30 クラーク・ケント:ザ・レッド・サンの世界のスーパーマン、ソ連書記長 アース31 クラーク・ケント:ダークナイトリターンズの世界のスーパーマン、極右思想 グリーンランタン アース05 ハル・ジョーダン :マルチバースのハル・ジョーダン アース12 ハル・ジョーダンIII:ハル・ジョーダンの孫、アニメ「バットマン・ザ・フューチャー」の世界 アース32 ブルース・ウェイン:アビン・サーが選んだ後継者がバットマンだった「バットマン・ダーケストナイト」の世界 ワンダーウーマン アース アース アース フラッシュ アース02 ジェイ・ギャリック:フラッシュ1、アース2なのでニューアースのジェイとは厳密には別人 アース09 ライア・ネルソン:女性のフラッシュ アース03 ジョニー・クイック:反転して悪人となったヒーローたちがいる世界のフラッシュ ブルービートル アース33 テッド・コード:巨大な大きいブルービートル アース39 ダン・ギャレット:外見は三代目ブルービートルそっくり アース26 スカラベ:ブルービートルの群れで構成されている スターマン アース07 コートニー・ウィットモア スターウーマン アース17 知的なゴリラ、カマンディと地球の調停者を務めていたらしい アース48 ミカール・トーマス:ブラックプラネット ナイトシェード アース13 ニューアースにそっくりなどこか アース3 レイス アース10 アース50 アース06 【ネタバレ】 スーパーマンプライム リーフ個別ストーリー簡易解説 #1 #2 #3 #4